意外と作るものがない

 Rust練習のために丁度いいゲームがないか探している。1ファイルで収まるくらい小さくて、可能な限りシンプルなものが良い。ありそうでなかなか見つからない。よく挙げられるのが2Dのシューティングなんかだ。シューティングゲームはどの程度作り込むかによってプログラミングの規模に大きな幅がある。シューティングゲームに限ったわけではない。ただ、シューティングゲームは根底のゲームロジックはどれも同じだ。敵に弾を当てる、敵の弾を交わす、それだけなので、シンプルなゲームと言える。プレイして面白いかどうかなどは求めていない。ゲームを作ることが目的ではなく、プログラミングの練習ができれば良い。結果として何かを残したいだけだ。とりあえず動作すれば良い。

 シューティングゲームの名作だと、自分の中ではグラディウスが真っ先に思い浮かぶ。これのクローンを作るのはなかなか大変だ。練習のためのモチーフとしては複雑過ぎる。他に思いつく、もっとも有名なシューティングゲームはインベーダーゲームだろう。グラディウスに比べればシンプルだ。練習題材として十分にシンプルだろうか。少なくともPongよりは難易度に高いように見える。Pongは画面にパドルとボールという2つの要素しかない。インベーダーゲームは、自機、防壁、敵がたくさん、UFO、敵の弾、自機の弾、こんなにもたくさんある。必ずしもこれらを全部作らないといけないわけではない。Pongと同じくらいシンプルにするなら、敵が1体と自機で弾を打ち合うということもできる。なんなら敵は弾を撃ってこないようにして、1対1で、一方的に敵に弾を当てるだけとしてもよいだろう。これならPongより少しだけ要素が増えただけで、十分にシンプルといえるのではないか。ただ、これを作っても何かをやってやったという達成感が得られないのが残念なところでもある。PongはPongとして完成されている。インベーダーゲーム先に上げたような要素全部が入ってインベーダーゲームだ。一方的な1対1だともはやインベーダーゲームの名前で定着しているものとはまったく異なるので、完成されたゲームとは言えない。クローンを作ったとは言えなくなる。

 クローンを作ることにそれほど固執する必要はないだろう。絵のデッサンとは違う。絵の贋作を作ることにそれほど重きを置く必要もない。先日のPongも、オリジナルの特徴的な部分を抽出してそれっぽく見せたものに過ぎない。オリジナルのプレイ感やゲームを面白くするために工夫されている様々な調整が欠落していて、クローンであるとは言えない。目立つのは、パドルの操作にかかる慣性や、ボールを打ち返すときにパドルの状態によって軌道や速度に変化を与えるなど、ゲームに変則的な法則を取り込んで、プレイヤーにゲームの状態を予測させることで楽しみや快感をもたらす、そういったぱっと見は分からなくても、ゲームの面白さを決定する重要なところが欠落している。そういうのを作り込むのは、ゲームプログラミングの練習には重要とは言える。今はまだRustの基礎を練習しようとしていて、ゲームプログラミング自体にはに重きを置いていない。どうせ作るならゲームがいいかなという程度だ。なので、Pongあれで良かった。あのくらい簡単なものがちょうどいい。

 昨日書いたのだけど、ある程度の複雑さがないと、Rustの特徴を活かしたプログラミングをする必要性がなくなってしまう。1対1の一方的なシューティングゲームを作るとして、シンプル過ぎるのではないだろうか。たぶん、シンプルすぎるように思える。しかし、やってみないとわからないところでもある。一発で成果を得ようなどと考えず、何度か繰り返していって感触を掴んでいくのが良い。何度も繰り返していれば、だいたいどの程度の規模感なのかを予測できるようになって、Rustの練習としてどの程度有用かも把握できるようになっていくだろう。今はまだシンプルすぎることを懸念しすぎるような時間じゃない。とりあえず1対1のをつくって、次に敵を増やして、弾を撃ってくるようにして、と段階的に発展させていくとよい感じがする。Pongしたって、あれで完成とはせず、オリジナルはやったことないのだけど動画で確認できるような、それに近づけていくのも良い練習になりそうだ。

 だいたい1対1の一方的なシューティングが候補に見えてきた。他にもいくつかある。テトリスとか、ブロック崩しとかどうだろう。テトリスは原始的なバージョンであってもそれなりに複雑なプログラムになる。さらに面白くしようとすればいくらでもやることがある。現在でも活発にプレイされているような完成されたルールと拡張性を備えた奥の深いゲームだ。ブロック崩しは、対人戦がないからというのもあって、テトリスほど現役のゲームではない。その分、基本的なプログラムのシンプルさという点では軍配が上がる。複雑なゲームであると、完成させることからとりあえず動作させることに意識が持っていかれる。そしてRustの練習をするという目的から外れてしまうことがある。コードがとりあえず動かすためにやっつけ仕事になってしまうということがある。意識していればそんなことにはならないというのは当てにならない。長い時間コンピューターに向かっていると、早く終わらせて次に行きたいという気持ちが湧いてくるのは避けられないことだ。テトリスはそれなりに複雑なロジックがある。ブロック崩しはPongのちょっと複雑なバージョンといった程度でちょうどよい。テトリスの原始的なものはいろんな言語で作ったことがあるけど、そんなに成果が得られたという感じがしない。どうしてもとりあえず動作させることに意識が持っていかれてしまい。言語を注意深く観察することを降ろさかにしていたためと思われる。ブロック崩しはあまり作ってこなかった。テトリスとブロック崩しのどちらかにするとなったら、ブロック崩しが良いだろう。

 ここまでで、次の候補は、1対1の一方的なシューティングか、ブロック崩しとなった。当初考えていたのは三並べのようなパズルゲームだった。具体的には、Simon Tatham’s Portable Puzzle Collectionのクローンを作っていくことで練習にしようと思っていた。いたのだけど、こういうパズルゲームは、リアルタイム性がなくて、SFMLのようなライブラリとはあまり相性が良くない。典型的なメインループを中心にフレーム単位でゲームを回すという処理が必要とされない。不可能ではないし、特段難しくなるというわけでもない。そうなのだけど、これはGUIライブラリを使ってやってみたいと思っていた。GUIのフレームワークが想定する、おそらくイベントドリブン型のプログラムでやってみたい。なので、もう少しあとにとっておくことにする。

 もっとさくさく作りたいものが見つかるかと思っていた。意外と見つからない。Rustの練習のためという名目があるので、ちょうどよい感じになるかどうかを考えると、かなりの制約があることが分かった。一番良いのは楽しみながらやることだ。やらなければならないという負の感情を抱えたままやるよりも、楽しんでやったことのほうがずっと脳はよく記憶してくれそうな気がする。楽しむということでは、自分でオリジナルのゲームをデザインしてそれを作るというのがベストだ。まだそこの領域まで到達していないので、今はクローンをたくさん作って行くことで我慢しておこう。

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