PC再生

6月に入ってから禁煙を始めたこともあって、気を紛らわすために、ちょっと違うことに取り組んでみた。何をしていたかというと、部屋の隅で冬眠している、古いPCを再利用できないかを実験していた。ターゲットとなるのは6台ある。そのうちの新しい方の2台に絞ってやることした。一つはPhenom II X3、もう一つはCore 2 Quad Q6600のものだ。X3は2010年、Q6600は2008年頃にリリースされたもので、およそ15年ほど前のCPUだ。X3は家族が使用していたもので、Q6600は自身が過去に使用していたものだ。どちらも自作PC、つまり、パーツ単位で購入して組み立てたものだ。リフォーム前の状態では、Windows Vistaがインストールされていた。これは、最後に購入した、また最後に利用していたWindowsのバージョンでもある。それから完全にLinuxに移行してしまった。

まず、現状のVistaに入っているデータや、動作状況、パフォーマンスを確認してみる。Vistaは削除してしまうかどうか迷うところだった。Q6600の方で、1台は使えるようにしておくことにした。こちらは唯一のSSD (128GB)にインストールされている。動作はそこそこ軽快だ。しかし、Vistaでインターネットに繋ぐのも、何か生産的なことを行うのも、時間を浪費しているだけのようで気が進まない。一方で、最後のWindowsとして、残しておきたい気持ちもある。本当に必要になることには、まずならないだろうから、きっぱり消してしまった方が心理的にも物質的にも健全であることに違いはない。もし、万が一必要になったときは、そのときに再インストールするようにすれば良いとも思われる。やっかいなのは、インストールが非常に面倒だということだ。自動ライセンス認証に失敗すると、電話を通して30桁近くのキーを入力する手間が発生する可能性があり、そんなことはもうやりたくない。そういうわけで、一応残しておくことにする。その他のストレージとして、1TBのHDDが3つ接続されている。ここにLinuxをインストールしていくことにする。このPCのためにSSDを購入する気にはなれない。

Q6600の方は、事前に問題があることを認知していた。1年くらい前から、使用中に突然電源が落ちて、リセットがかかってしまう現象が発生している。Manjaroをインストールして、Vistaの問題で発生しているのかどうかを特定しようとした結果、そちらでも落ちるので、ハードウェアの問題だということが分かっている。今回、その原因を完全に特定できた。使用しているPCケースのファンが小さめで、騒音がうるさく、もう一つ、お亡くなりになったPCのケース、これもやはり相当古いものではあるが、が気持ち静かなので、そちらに移すことにした。その作業中に、CPUクーラーがぐらついていた。作業中にはずみで外れてしまったのかと思っていたが、なんと、4つの取り付けピンのうち一つの爪が折れてしまっていた。おそらく、そのためにCPUが冷却されず、MBの保護によって落ちていていたのだろう。これはありがたいことだった。おかげでCPUもMBもお亡くなりにならずに済んだ。その爪の折れたCPUクーラーは破棄することにして、代わりのものは用意がないので、購入する必要があった。Q6600はLGA775というソケットになっている。PCをショップに言ってみると、運良く一つ、手頃な値段で入手することができた。ヒートシンクが巨大で、ケースのスペースギリギリで、取り付けになかなか苦労した。無事取り付けることができたようで、適当な負荷をかけながら試運転してみると、もう落ちることはなくなった。

準備は整ったので、Linuxをインストールしていくことにした。ここでも厄介な問題に遭遇した。X3の方はインストーラーのライブ環境のブート中に停止する。Q6600の方は、ビデオの信号がなくなり、No Signalと表示され、ディスプレイが電源オフになる。それぞれ、別の原因を抱えていた。X3の方は、DVDメディアからインストールしようとすると失敗するようだ。USBスティックメモリからインストールすれば、大体はいける。MXとUbuntuをインストールすることに成功した。Q6600の方は厄介で、かなりの時間を費やした。古いハードウェアにも対応していそうなディストリビューションを片っ端から試していったが、同じ症状で一つとしてパスしない。諦めて、FreeBSDをインストールしてみることにした。こちらはうまくいく。FreeBSDのセットアップを続けていくと、Nvidiaのドライバをインストールするステップまで来た。FreeBSDでも、プロプライエタリなNvidiaのドライバがパッケージマネージャーで提供されている。取り付けてあるビデオカードはGTX460というものだ。2010年ごろに購入している。Nvidiaのドライバにはいくつかバージョンがあって、順番に試していくと、390というバージョンのものでうまくいった。これはかなり古いバージョンだ。それ以降のものでも以前のものでもうまくいかない。うまくいったといっても、完璧ではなく、仮想端末の表示がめちゃくちゃになる、悪い副作用もある。これの解決策は見つかっていない。ともかく、一応はFreeBSDが使える環境になった。ここで、一つ思い当たったのが、LinuxのインストーラーがNo Signalになるのは、ビデオカードのドライバが問題ではないかということだ。今回の最大の注意点はそれだった。Linuxのインストーラーのブートオプションにnomodesetというを加えてやると、見事に、ことごとく起動する。どうやら、インストーラーが使用するオープンソースのNvidiaドライバnovaeauが、このGTX460をうまく扱えていないのではないかと思われる。

nomodesetを指定することでインストーラーは使えるようになった。よってインストールも可能になった。インストールした後も重要な作業が残っている。まず、初回起動時には、GRUBのオプションで、やはりnomodesetをしてやらないといけない。その後で、システムにプロプライエタリのNvidiaドライバをインストールする。バージョンはもちろん390のものを使用しないといけない。厄介なのは、ディストリビューションによってそのインストール手順がまちまちであるということだ。何をやるべきか分かっていないとすぐに混乱する。Nvidiaのサイトで配布されているインストーラーを使用することもできるが、これは推奨される方法ではない。ディストリビューションによって提供されるものを利用するのが望ましく、利用できない場合の最後の手段としておく。

Q6600でやるべきことは明らかになった。面倒ではるあるのだが、もう迷うことはない。すでにいくつもDVDに焼いておいたので、それを利用したい。1TBのHDDのパーティションを100GB程度に細かく切っていく。8つ程度のOSをインストールする。実用的には、そんなたくさんのOSをインストールしても運用しきれないので、意味はないが、実験目的でやってみることにする。結果、2つは不完全な状態になったものの、ほとんどはきっちり利用可能な状態に持っていくことができた。最終的には、11個のOSが共存するシステムができた。

今回の体験を通して、GRUBの扱いと、ディスクの扱い方に少し自信が持てるようになった。通常の利用においては、1つのPCに10個もインストールする機会はそうあるものではない。扱いづらいシステムになってしまうし、あやまって他のOSの領域に干渉してしまい、いつ破壊してしまうかわからない、不安定な状態になる。完全に実験目的のPCだと割り切ってやらないといけない。そんな機会はあまりなかったので、GRUBもディスク管理ツールも最低限の利用しかしたことがなかった。実際に運用しているPCでは、現状を破壊してしまわないように、慎重に取り扱う必要があり、もともとそうあるべきツールではあるものの、その程度の利用だとあまり理解を深めるための体験ができない。きっちり理解するためには、破壊してしまっても、そんなに被害が出ない、隔離された環境で思い切った実験する必要がある。なおかつ、実際の利用では必ずリスクが伴うので、実験においてもそれを反映して、完全にリスク0ではなく、失敗したらやってしまった感を味わえるようにしておきたい。今回の場合、これまでの作業が無に期するなる程度のリスクがあり、ちょうどよい。なるべくならそんな失敗はしたくないけど、やらかしてしまったら仕方ないと割り切れる。

GRUBとディスクについて、そこそこの経験値を得ることができた。しかし、どちらも古いPCの環境でやったもので、レガシーなBIOSとMBRでの実験であった。現行のPCではUEFIとGPTであるのが普通だろう。こちらの経験値稼ぎもどこかでやっておきたい。

もともと、眠っているPCの再生を目的として始めた作業であった。古いPCではあるが、極めて古いわけではなく、なんとか利用できるくらいの性能をもったPCではないかと考えていた。インストール作業を繰り返しているうちに、そのような甘い期待は裏切られることとなった。すこぶる動作が重い。Q6600の方は、どのディストリビューションでも、軽量なantiXのようなディストリビューションでも、満足のいくレスポンスが得られない。特にFirefoxの起動が遅い。システムの起動も遅い。システムの更新も遅い。もはや約15年前の構成なので、仕方のないことではある。むしろ、まだ動くことに感謝をするべきなのだろうか。X3の方は、MXしか動かしていなけど、なかなか良いレスポンスが得られることに満足している。

以前はよく、古いPCにLinuxをインストールして再活用しよう、というような見出しの雑誌などを見かけたものだ。もはやそのような状況ではなくなっているのではないだろうか。現代のLinuxディストリビューションは、そのような古いハードウェアのためにチューニングされていない。確かに、軽量なディストリビューションを使えば、かなり古いPCでもデスクトップ環境が整う。しかし、重要なWebブラウジングに必要とされるスペックが上がっていて、15年前とは全く異なっているので、いくらデスクトップが軽快に動作しても、Webが快適でなければ、有用なデスクトップ環境とは言えないものがある。Q6600は15年前のCPUだが、もうひとつ古い、Pentium 4やAthron XPといったものもある。これらを引っ張り出してきて再利用を試みることに、実用的な意味はあるのだろか。どう頑張っても、Webブラウジングのレスポンスを満足するものにするのは無理だろう。また、電源効率も悪く、地球に優しくない。実験目的なら良いだろうという考えも改めたほうが良い。OSのインストールにかかる時間も耐え難いものがある。最新の安いモデルで構成したPCを用意して、そこで実験を行うほうが、遥かに効率が良い。あえて太古のシステムを利用する価値を上げるとするなら、ノスタルジックな気分を味わえることと、過去を振り返る目的と、どこまで動作するかテストを行うことくらいだ。そうでないなら、さっさと新しいPCを組んだほうが良い、という結論に達した。

 

 

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